決算書を確認する際、皆さんはまずどこに目を向けますか?多くの方は「今期は黒字か赤字か」、つまり損益計算書(PL)の「当期純利益」を真っ先に確認されるのではないでしょうか。しかし、現在の医療経営において、1年間の利益だけで「病院の実力」を判断するのは非常に危険です。今こそ、経営者の真の成績表である「貸借対照表(BS)」に注目すべき理由を解説します。1.損益計算書では見えない「病院の実力」現在、医療法人の決算書は厚生労働省の規定フォームにより、都道府県庁で誰でも閲覧が可能です。他院の決算書を分析する際、利益の数字だけを見て「あの病院は儲かっている」と判断していませんか?実は、近年の損益計算書には以下のような「一時的な要因」が強く反映されています。補正予算による補助金や、診療報酬の臨時的なプラス改定建替えに伴う旧病棟の取り壊し費用などの多額な特別損失生命保険の解約に伴う一時的な雑収入の計上クラスター発生や急激な物価高騰による突発的な収支変動このように、PLはあくまで「単年度」の記録に過ぎません。一時の経営判断や外部環境によって数字が大きく跳ねることもあれば、沈むこともあります。つまり、PLの利益だけでは、医療法人が持つ「本当の体力」を見誤るリスクがあるのです。2.金融機関が「貸借対照表(BS)」を重視する理由一方、貸借対照表(BS)は、医療法人の設立から今日に至るまでの「経営の積み重ね」を映し出す鏡です。例えば、30年間の利益の蓄積である「純資産」が30億円ある医療法人を想定してみましょう。仮に単年度で1億円の赤字が出たとしても、純資産は29億円(約3%の減少)になるだけで、経営の基盤は揺るぎません。財務のプロである金融機関がBSを重視するのは、この「蓄積の安定性」を見ているからです。純資産が30億円、現預金が20億円あるそこに対して金融機関の貸付が5億円であるこの状況なら、1年間の赤字など問題になりません。むしろ「さらに融資を提案したい優良先」と判断されます。3.目指すべき「理想の貸借対照表」とは?貸借対照表には、経営の歴史によって様々な「形」が現れます。①理想型(盤石な財務基盤)②借入依存型(レバレッジは効いているがリスク高)③内部留保型(堅実だが投資に消極的なケースも)④長短逆転型(短期資金で長期資産を賄う危険な状態)⑤債務超過型(抜本的な経営改善が必要)特に①の「理想型」とされる医療法人には、明確な共通点があります。理想的な財務指標の目安現預金残高:月間医業収益の2倍以上流動比率:流動資産が流動負債の2倍以上借入金依存度:借入残高が年収の8割以内債務償還年数:10年以内自己資本比率: 最低20%(超優良法人では90%超も存在)まとめ:経営の「質」はBSに蓄積されるこれらの指標は、1年だけ頑張っても達成できるものではありません。また、1年業績が悪化しただけで崩れるものでもありません。長い年月をかけて、いかに健全な財務体質を築いてきたか。その「経営姿勢」そのものが数字となって表れるのが貸借対照表です。単年度の利益(PL)に一喜一憂するのではなく、永続的な医療提供を可能にするための「本質的な成績表(BS)」を育てること。それこそが、2026年以降の不透明な時代を生き抜く病院経営者の最大のミッションと言えるでしょう。貴院の貸借対照表は「どの形」に当てはまりますか?「利益は出ているのに現金が残らない」「将来の建替えに向けたBSの整え方がわからない」といったお悩みに対し、医療機関専門の財務診断を行っております。5年、10年先を見据えた強い財務体質づくりを、共に進めていきましょう。まずはお気軽にお問い合わせください。