■コストコントロールが求められる医療機関近年の病院をとりまく環境は、めまぐるしく変化がおきています。診療報酬改定、介護報酬改定をはじめ、医療計画や介護保険事業計画といった医療政策によって病院経営は大きく影響を受けています。また、団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けてこの変化はますます拍車がかかります。今後、日本の国家財政を考えると、以前のような診療報酬のプラス改定を見込むことは困難であり、病院経営で適正な利益を確保するためには、いかにコストを管理(コントロール)するかが問われる時代となっています。■コストなのか、投資なのか日本の医療は労働集約型かつ資本集約型の産業です。いずれの事業形態も、まず支出が伴います。この支出が先行投資となるか、単なるコストとなるかで病院経営に与える影響は大きいです。先行投資とは、将来的に価値を生み出す(収益をあげる)支出、コストとは、将来的に価値を生み出さない支出を意味します。つまり、コストを管理するということは、いかに将来的に価値を生み出さない支出をなくすかということです。それはコスト削減という表現になるかもしれませんし、将来的に価値を生み出す支出に要素を変化させることも指します。■原価管理の必要性支出が先行投資となっているか、コスト削減できる余地がないか、適正な利益が確保できているかを判断するためにも、法人全体の決算書、病院事業の試算表だけでは、なかなかクリティカルに意思決定、現場改善、職員の行動変容を促すことはできません。また、効果測定する仕組みがないままだと、成果実感がわくこともありません。そこで登場するのが、原価管理です。原価管理は病院のように様々な部門(病棟)や診療科、職種が存在する事業において、どの部門(病棟)や診療科がどれだけ利益を出していて、どれだけ改善余地があるのか等を示すことができます。永続的に地域で医療を提供し続けるためにも、病院は適正な利益を確保する経営体制が必要です。病院経営は、地域における病院の役割、その病院を構成する部門(病棟)や診療科の役割、個々人の役割、それぞれが求められる役割を果たすことで成り立っています。現状が適正な経営状態であるかどうか、何か課題がないかどうか(困っていることはないかどうか)を客観的に判断し、行動の結果を効果測定できる原価管理が今後の病院経営では特に、求められています。本記事では、今後原価管理(計算)について、手法や事例を用いて紹介していきます。