■実際原価計算の計算ステップそれでは、今回から作業工程に進んでいきます。それぞれプロフィットセンターとコストセンターに区分した後、下記ステップで進めていきます。1st STEP 直課と固定配賦2nd STEP 一次配賦(間接部門、共通部門の配賦)3rd STEP 二次配賦(中央診療部門の配賦)■現場がイメージしやすい直接利益1st STEPで実施すべきは、プロフィットセンター、コストセンターに収益とコストを全て計上するために、直課と固定配賦を行うことです。直課は、直接計上できるものなのでイメージがしやすいですが、固定配賦の定義に一工夫が必要です。固定配賦は、コストの中でも各部門が等しく計上されるべきコストを一定の配賦基準で計上することです。代表的な配賦基準としては、職員数や延床面積・定床数があります。職員数は関わる人数による事業規模を表し、延床面積・定床数は占有している広さによる物理的な事業規模を表します。これらは日常的な事業の中で大きく変わることはないため、固定配賦の配賦基準として使用される頻度が多いです。もちろん新しい事業や事業の廃止があった場合はこれらの数値も変化することになります。ここまででプロフィットセンター、コストセンターともに算出される利益が直接利益です。直接利益は、一番自分たちが稼いだ収益や消費したコストに関して認識がもちやすい利益です(表1:点線部分)。よく現場がイメージしている利益はここを表していることが多いです。ただ、上述のとおり、コストセンターに計上されている病院経営のコストについてプロフィットセンターはコストを抱えないといけないので、一次配賦、二次配賦を行っていきます。この配賦されるコストの意味づけを現場にすることが実際原価計算では難しいところです。■コストセンターの費用を按分する(一次配賦・二次配賦)一次配賦は、間接部門、共通部門の配賦を実施していきます。配賦に関して使用される配賦基準は収益比、職員数、延患者数、均等按分等、一定ではありません。ただ、共通していることはプロフィットセンター(+中央診療部門)が負担する病院経営のコストを計上することであるので、規模や業績に応じた不公平感のないよう計上の仕方が求められます。二次配賦は、中央診療部門のコストを配賦するためそれぞれがプロフィットセンターに対してどのような貢献をしているかによって計上する方法は異なります。代表例を下記記載します。薬剤科・・・処方箋枚数、薬剤指導件数※病棟管理業務や化学療法室には直接人件費で計上します。放射線科・・・一般撮影件数(係数1)、CT件数(係数3)、MRI(係数5)その他高額医療機器の件数(リニアック、アンギオ、マンモグラフィー、ガンマナイフ等々)栄養科・・・食数、栄養指導件数、NST臨床検査科・・・検体検査数、生体検査数リハビリテーション科・・・リハビリ提供単位数※回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟には直接人件費で計上します。手術室・・・麻酔時間、手術時間臨床工学科・・・医療機器の減価償却費(修繕をしているため)※透析室や手術室には直接人件費で計上します。内視鏡室・・・内視鏡件数救急部・・・救急・時間外外来件数、救急搬送件数上記は、ヒアリングを通じて実際の業務に基づいて検討することが大事です(あくまで代表例です)。■実践にあたって基本となる5つのデータ表1にあるような一次配賦、二次配賦を実施することで、全てのコストを計上させる、この手法を階梯式配賦法といいます。階梯式配賦法を実施するために必要な資料は、5つの基本データに分けられます。直課データ:直接計上できる収益、コストのみをピックアップした指標※使用する資料によって課税、非課税は要注意!配賦基準データ:配賦を行うための基準となる指標※月々変更となるため、配賦基準データの集計が一番負担感を感じる。診療行為データ:レセコンから集計できる診療行為別集計表(診療行為区分の小計データ)人件費データ:部署、職業、常勤・非常勤、個人に区分されたデータ※医師、看護師のコストの計上方法は要注意!試算表データ:月次単位の試算表(病院事業のみ)※管理会計に耐えうる内容になっているかどうか=月次決算ができているかどうか。結局は、構成されている収益・費用がどのような内容であるかをきちんと説明できることが、原価計算では一番重要なポイントです。管理指標(帳票)ができても、そこにメッセージがこめられないのであれば、徒労感だけが残ってしまいますね。それでは、次回はどのような着眼点でデータを収集すれば良いかご説明します。