■基本となる 5 つのデータ今回は、原価計算に使用するデータの選定方法について、説明をいたします。前回のレポートで、階梯式配賦法を実施するために、必要な資料について説明をしています。少しリマインドをいたします。基本となる 5 つのデータ①直課データ:直接計上できる収益、コストのみをピックアップした指標 ※使用する資料によって課税、非課税は要注意!②配賦基準データ:配賦を行うための基準となる指標 ※月々変更となるため、配賦基準データの集計が一番負担感を感じる。③診療行為データ:レセコンから集計できる診療行為別集計表(診療行為区分の小計データ) ※原則データは必ず抽出できます!④人件費データ:部署、職業、常勤・非常勤、個人に区分されたデータ ※医師、看護師のコストの計上方法は要注意!⑤試算表データ:月次単位の試算表(病院事業のみ) ※管理会計に耐えうる内容になっているかどうか=月次決算ができているかどうか。表15 つのデータの関係を最終アウトプットイメージで表現すると(表 1)のようになります。軸となる5試算表データのうち、対象となる部門(プロフィットセンター、コメディカル部門、間接・共通部門)の収益や費用と認識できるものを選定していきます。それが、3診療行為データや4人件費データ、そして1直課データです。試算表の中でも直課できるものを選んでいった後、どうしてもどの部門の収益や費用であるか区分ができないものを2配賦基準データをもとに按分していきます(表 2 参照)。表2■注力すべきところを見極めるここで、注意点があります。当然、直課できるものが多ければ原価計算の精度は高まります。ただし、このことに注力してしまうと、いつまでたっても帳票はできあがりません。そうです。原価計算に正しいものは存在しません。では、何のためにやるのかという反論が返ってくるといけないので、言い方を変えると100%正しいものはできません(第 3 回レポート参照)。精度は、目的に応じていれば問題はありません。どこで線引きを行うかです。その線引きを当社では「収益に対して 1%以上の費用(勘定科目上)」であれば対応するようにしています。それ以下であれば、直課をしても按分をしても結果は大きくは変動しません(塵も積もれば・・・は、ここでは切り捨てます)。重要なのは、注力すべきところは時間を投下してでも精度を高めるということです。■適正な収益が計上できているか第一に収益に関しては、すべて直課できることが必要です。判断が難しい部分としては、予防接種や文書料といった細かな収益や保険査定減等です。ただ、医事課がしっかりしている場合は、レセコンに自費診療分を含めているケースがあります(診療科ごとの保険査定減を出しているところもあります)。ここは各病院で確認が必要ですが、それほど難しい部分ではありません(保険請求以外の売り上げは別途集計をされているケースがあると思いますが、内税表記、外税表記は気をつけてください)。収益に関して注力すべきポイントは、適正な収益が試算表上計上できているかどうかです(表 3)。ここは病院会計準則とも異なる部分ですが、以下のルールで収益が計上されているか確認をお願いします。例) 10 月の収益10 月請求分+10 月請求保留分±9 月以前の保険査定減(実際に減点となった分)これを、多くの病院は、以下のような処理をしています。例 2) 10 月の収益10 月請求分+9 月以前の再請求分+9 月以前の月遅れ請求分±9 月以前の返戻・減点例 3) 10 月の収益10 月請求分±8 月の入金と請求の洗い替え差額原価計算では、収益は医事課のデータ(原紙)を使用するため、適正に収益が計上できていないと差額がどうしても出てしまいます。繰り返しになりますが、原則収益は直課です。スタートラインで差額がでてしまうような処理になっていないかは時間をかけてでも確認する必要があります。表3医事課から預かる資料は診療行為区分の小計が部門別に表記されているもの(診療行為集計表)と依頼していただくと下記のようなものが頂けます(もしくは、表 4 のようなものをくださいと言ってください)。表 4 には出来高と DPC という表記をしていますが、使用用途は下記の通りです。DPC : 実際に部門の収益として計上する数値出来高 : 配賦基準として使用する数値※包括病棟の場合、出来高集計をされているケースは稀ですが、必ず確認してください。このあたりは、診療報酬を理解していないと難しい部分かもしれませんが、詳しい説明は省略させていただきます。費用に関しては、また次回・・・。表4