■先を見据えた仕組みづくりの重要性今回は、費用に関するデータについてお話しします。原価を計算するので、ここが最初の山場になります(次の山場はコメディカルのコストの割り振りですね…)。少し脱線しますが第1回のレポートで、同じ支出であっても「先行投資」と「コスト」の違いを述べました。最近では、原価管理を構築していく中で、この数値をどうしていくべきか、ということに着目しながらロジックを組み上げていくことが多くなってきたように思います。収益の構成要素である平均単価と延患者数はどうか(平均在院日数や新入院患者数等々)。費用の中でも、材料費はどれだけ利鞘がでているのか(薬価交渉や診療材料の統一によるコストダウンは不可能か)。人件費は、医師は自身の給料の10~13倍の収益上げているか(ある市民病院は15倍だそうです…)、看護師は法定人員からどのぐらい余剰であるか(看護師しかできない業務の整理ができているか)、空床を出さないようにどのような工夫をしているか(1床あたりの固定費は認識できているか)、コメディカルスタッフは自身の動きで直接診療報酬に関わる行為についてどれだけ実践しているか。このようなことに着目しながら、Aという課題があるから現在の数値になっており、Aを改善するとこのような数値になるであろうと、先を見据えた仕組みづくりが重要だと感じています。院内でディスカッションを行うためにも、押さえるポイントはきっちりと押さえていきたいですね。■費用の80%は材料費、人件費、設備関係費さて、費用で重点的に押さえるべきポイントは下記の通りです(表1)。病院の損益のうち費用の80%を占めるのが材料費及び人件費、そして設備関係費です。つまり、材料費、人件費、設備関係費を詳細に把握することができれば、一定の精度は担保できるもの(現場感のある数値になること)と考えることができます。言い換えると、材料費は医師自身がコントロールしやすい費用であり、現場でもよく議論されるコスト削減の対象のひとつです。また、人件費に関しては自身の働きがどうかを把握するのに一番重要な指標として着目されています(人件費率や年俸交渉等)。設備関係費については、使用部門とそうでない部門(特に内科系と外科系)とでは、診療報酬の単価も異なりますし、何よりコストの負担に明確な差が必要です。その他一般経費については、少額であるため詳細に把握した結果が損益に重大な影響を及ぼすことは少ないと考えられます。そのため、ここに時間を投下することは行わないようにしています。たまに、研究研修費をしっかりと使用した部門に計上したいというようなオーダーがあったりしますが、それらは個別対応になります(これは良い意味でノウハウをインプットしているという評価をしたいという意味です)。詳細な数値を把握しない場合は、原則、勘定科目の中身を確認して適正な割り振り基準(配賦基準)を決めていくことになります(配賦基準は次回!)。では、材料費、人件費、設備関係費をどのようにして計上すべきかについて述べていきます。