■一次配賦=固定費と考える一次配賦・二次配賦については、第4回レポート(実際原価計算の階梯式配賦法のくだり参照)で一部説明をしています。そのため、今回は実際にあった事例を中心に説明したいと思います。一次配賦は、第4回レポートでは下記のように説明しています。一次配賦は、間接部門、共通部門の配賦を実施していきます。配賦に関して使用される配賦基準は収益比、職員数、延患者数、均等按分等、一定ではありません。ただ、共通していることはプロフィットセンター(+中央診療部門)が負担する病院経営のコストを計上することであるので、規模や業績に応じた不公平感のないよう計上の仕方が求められます。実際に数値を計上していく段階では、以下の点に注意しなければいけません。①できる限り共通部門に費用を計上しないようにする。②間接部門に関しても、職員に関する部門と患者様に関する部門とを区分する必要がある。 例)総務課と医事課 等々最終的にはプロフィットセンターに費用が計上されるため、内容が不透明な金額を計上しないようにする必要があります。その意味でも一次配賦は、ほぼ固定費の考え方をすべきではないかと考えています。そのため、配賦基準として適しているであろうものは以下の三点です。1)職員数:部門の規模を表すため、規模に応じた固定費の負担をする。2)延患者数:医療法の考え方に則して、外来を 1 とした場合、入院を 2.5 倍の係数をかけた数値で負担をする。3)均等按分:1 つの部門をかまえるのに必要なコストとみなし、均等按分を行う(ただし、非常勤医師のみの診療科等については調整が必要)。どのパターンが一番イメージに近しいか、病院ごとに確認を取りながら進めなければいけない点です。■二次配賦=中央診療部の貢献度合いを可視化する次に、二次配賦ですが、第4回レポートでは下記のように説明しています。二次配賦は、中央診療部門のコストを配賦するためそれぞれがプロフィットセンターに対してどのような貢献をしているかによって計上する方法は異なります。代表例を下記記載します。薬剤科・・・処方箋枚数、薬剤指導件数※病棟管理業務や化学療法室には直接人件費で計上します。放射線科・・・一般撮影件数(係数 1)、CT 件数(係数 3)、MRI(係数 5)その他高額医療機器の件数(リニアック、アンギオ、マンモグラフィー、ガンマナイフ等々)栄養科・・・食数、栄養指導件数、NST臨床検査科・・・検体検査数、生体検査数リハビリテーション科・・・リハビリ提供単位数※回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟には直接人件費で計上します。手術室・・・麻酔時間、手術時間臨床工学科・・・医療機器の減価償却費(修繕をしているため)※透析室や手術室には直接人件費で計上します。内視鏡室・・・内視鏡件数救急部・・・救急・時間外外来件数、救急搬送件数概ね、この内容で問題ないと思います。ただ、簡素化するために、医事請求データの各診療行為区分の集計データを使用する場合がありますが、これは、前回お伝えしたデメリットをはらんでいる為、使用には十分注意が必要です。できる限り、どれだけ時間を投下しているかということを中心に、コストを按分する方法を検討して頂きたいです。■手術室が赤字か黒字かさて、これだけだとコピペだけで今回のメルマガが終わってしまい、クレームが出そうなのでもう少しだけ説明させていただきます。二次配賦の中でも一番議論が出てしまう手術室についてです。手術室については、各病院において黒字の場合と赤字の場合があります。その他のコメディカルはあまりこの現象はないのですが、手術室に関しては、どうしても検討しなければいけません。黒字の場合と赤字の場合では、同じ「手術室の按分」であっても似て非なるものなので、しっかりと内容を認識しておいてください(表 1)。(表1)のように、手術室のコストが 20,850 千円の場合、以下のようにケースを 2 つにわけて内容を確認します。いずれの場合も外科が収益を伸ばしている条件で、全体の収益は手術室の占有割合(麻酔時間)によって変動をさせないようにシミュレーションしています。ケース①:手術収益が 30,000 千円の場合手術室に関する収益がコストを上回っている場合、以下のように結果がでます。ケース②:手術収益が 18,000 千円の場合一方で、手術室に関する収益がコストを下回っている場合、以下のように結果が出ます。いかがでしょうか。本来、手術を多くした外科が評価されなければいけないはずが、手術室自体が赤字の場合、逆に費用が重く計上され、評価されるべき外科が赤字となっています。手術室自体が赤字の場合、マイナスの評価を振り分けてしまうことになるので、頑張れば頑張るほど利益が出にくくなってしまいます(性悪性によると・・・)。そのため、手術室全体の稼動をあげることをしなければ、ケース1のように適正に評価することが困難になります。そこで検討すべき内容が手術室の実施枠です(表 4)。本来手術をしなければいけない枠数をもとに、コストを按分することで実際にそれ以上実施した場合の診療科に対して評価をすることができるようになります。先ほどとは異なり、手術を多くなった外科は適性に評価ができ、手術が少なかった整形外科、脳神経外科について課題が浮き彫りになっています。おそらく実務的には麻酔時間による(占有割合)と固定費として計上すべき実施枠の双方を交えた配賦基準が一番現場としては、イメージがしやすいのかもしれないです。さて、長きに渡って帳票の仕組みについて話をしてきましたが、一旦は今回のレポートで網羅したことになります。それ以外の細かな部分についてはその都度また触れていきたいと思います。では次回から活用編(事例編)をスタートしたいと思いますので、お楽しみに!