■入院部門は採算がとれて当たり前外来部門が赤字傾向であれば、病院はどこで採算をとることができているのか。そうです、入院部門になります。前回の外来部門のように考えていけば紐解けるのかもしれませんが、施設基準が病棟機能で異なってきますので、ここでは割愛しようと思います。それらしい理由を述べると、論点が人員配置の話に終始してしまうため、ここではもう少しマクロな視点をもって頂きたいので、割愛します(めんどうくさいからではないですよー)。(表3)では、プロフィットセンターを「外来・一般病棟・回復期リハビリテーション病棟・療養病棟」の 4 つに設定して数値を表しています。注目して頂く内容は、一般病棟~療養病棟のコメディカル貢献値配賦後利益ですが、それぞれ 10%を超える利益率がでています。大雑把にですが、一般病棟は 10%前後、回復期リハビリテーション病棟は 20%前後、医療療養病棟は 15%前後ぐらいの利益率になるイメージです。各病院で違いがでるのは、平均単価(施設基準やオーダー数、平均在院日数等)や人員配置(看護師、看護補助者等)、材料費、設備関係費(建物)によるものなので、それぞれ差が出たときは、外来同様(表 3)の数値を軸に色々検証して頂きたいと思います。■稼働率=地域の医療ニーズの評価さて、ここで一律お伝えしておくべき点は、稼働率についてです。当然、稼働率が高ければ利益はでるということはみなさんも理解されていると思いますが、私はセミナーの時でも「稼働率=地域の医療ニーズの評価」と表現しています。つまり、稼働率が低いということは、地域において病院が担うべきポジショニングミスであるととらえてもいいのではないかと考えています。長期に渡り、稼働率の課題がある病院では、大半が病棟機能と患者層があっていないからというケースが考えられます。結果、稼働率が低いために損益として、採算がとれていないということにつながります。まずは病棟機能が病院の選択として正しいのかどうかを判断することが必要です。当然ながら、人員の配置や、過剰な設備投資、コメディカルの生産性(医師のオーダー数)が損益に影響する可能性はありますが、まずはハード面としての考え方に注目しましょう。病棟の運営に関する財務の視点は次回お話させて頂きます。いわゆる、空床による逸失利益と空床は 0 円ではなく赤字であるという論点です。■入院部門を数値で紐解くやはり、外来部門について検証を行ったので、入院部門についても検証しようと思います。(表1)は、一般病棟(55 床)、看護基準 10 対 1 の病棟をイメージして検証をしています(あとここに看護補助者、病棟担当の薬剤師やセラピスト等も含めないといけないのでしょうが、その分加算がありますので損益に影響はないということで割愛します)。一般病棟は、診療科によって材料比率やコメディカル費用も関わりによって大きく変わると思いますが、どちらも平均的な数値を使用しています。その前提で、損益分岐点を見て頂くと、この例では 54,745,667 円/月で利益がプラスマイナス 0 円となります。平均単価を 45,000 円とした場合、稼働率が 73.7%以上で利益が出る計算となります。平均単価はもう少し高いケースもあると思いますし、稼働率も 70%前半ということは原則少ないはずなので、病棟は利益が出やすいであろうという結果になります。やはり病院経営は入院部門の採算をいかに軌道にのせるかが大きな影響を与えそうです。■その他見ておくべき視点・損益分岐点収益、変動費、固定費、利益が出ているため、各部門や診療科で損益分岐点(Break-Even Point)が算出できます。平均単価の変動を加味せず、現状の平均単価の患者層を増やすと仮定した場合の必要な患者数が算出できます。・外来の利益外来部門は直接利益では、黒字が求められます。間接部門(病院経営のコスト)、コメディカル部門(診療の分担)と考えると、徐々にコストがかかってしまうため最終は赤字傾向となります。そのため、どこの部分で利益が黒字、赤字であるかを把握するのは重要です。※ちなみに、貢献利益は自身の給料が稼げているかですので、診療科別に見ると面白いです。